MASAHIKO EXPEDITIONS

記事一覧

燃料尽きたら。

Tue, 20 Jul 2010 21:09:17 0900
縦走最終日、バーナーの燃料切れにより温かい食事が摂れなかった。それは果たしてやばいか。いや、あまり事件ではない。なぜならシリアルとプロテインに余りがあるから。それらを胃に必要量送り込めば十分に回復する。肉体的には。

しかし、なかなか満たされない何かがあるのは、温かい食事が人間の精神的な豊かさのためにあるから。このことが、こういう状況になって心に突き刺さった。僕の中にある充足感の水がめは、この日、少し干涸びた。

一杯のコーヒー、ボウルに盛られた新鮮な生野菜、茹でたてのパスタ。これらがどれほど精神的に素晴らしいものであり、同時に、肉体的には必ずしも必要ではないかを知る。軍隊の士気高揚も宇宙飛行士の娯楽も、いずれも楽しい食事だというが、そういう多くのことが制限された状況でさえ温かい食事は重要とされているということだ。

温かい食事がいかに精神的な行為であるか、効率化された栄養食がどれほど貴重であるか、今までの自分がどれほど幸せであったか、真っ暗のテントの中でひとり考えていた。